
太田黒宣人さんが届けたい“素敵な場所”― Bel Endroit(ベルアンドロワ)
フランス語で“素敵な場所”を意味する「Bel Endroit(ベルアンドロワ)」という店舗の名称。この名称にはオーナーである太田黒宣人さんの、「お客様一人一人にとっての“素敵な場所”であり、何か一つでも思い出に残る場であってほしい」という思いが込められている。
たどり着くと、南国風のスタイリッシュなお店が待っていた。白を基調としたデザインは、山鹿の空の青と森林の緑に映えており、非日常感のある特別なひとときを楽しむことができる。そんな素敵な空間で、太田黒さんのお店づくりやまちづくりへの想いをうかがった。

夢を現実に。ベルアンドロワ誕生の軌跡
幼少期から農作物に囲まれて育ったオーナーの太田黒さんは、その頃から「料理の道に進みたい」という強い思いがあったという。
中学校時代に経験した調理実習をきっかけにその夢はより現実味を帯び、やがて調理師になろうと志を決めた。その後、フランス料理の修行を経て、ベルアンドロワを立ち上げた。修行時代は、大人数の対応が求められる結婚式の料理作りなども行った。大変さの中にも喜びがあり、その時の経験は今でも思い出として残っているという。
『フレンチのお店でありながらも、お客様にとってリラックスできる空間でありたい。』
そうした思いから、「気軽に立ち寄れる」フレンチのお店をオープンした。料理もスイーツも、それぞれのお客様の楽しみ方で過ごすことができるカフェレストランという形にして、それが現在の「すべてのお客様へ“素敵な場所”を贈る」Bel Endroit(ベルアンドロワ)となっている。
更には、山鹿の美味しく優れた食材を多くの人に届けたいという思いを抱いていた太田黒さんは、山鹿の食材を使って地域をアピールする機会になればと、お店で扱う食材にも多くの地元産のものを使用している。
しかし、店舗の立ち上げや経営は決して平坦な道のりではなかったという。山鹿市中心部からやや距離がある鹿北で、お客様にお店を知ってもらい、足を運んでもらうにはどうすればよいのか、今も試行錯誤を重ねている。特に定休日は、家族との時間を大切にしながらも、一緒に食事に出かけたりする際は、新しい飲食店をリサーチしたりしながらお店づくりの進化のヒントにしているという。そんな飽くなき探究を続ける太田黒さんから、料理人そして経営者としての強い心意気を感じる。
更には、昨年は山鹿の中学生が考案したオリジナルモンブランの指導にあたるなど地域連携の活動にも取り組んでいる。地域から声をかけていただき実現した取組みであったそうだが、『地域連携でもっと良いものを皆さんへ届けたい。』という太田黒さんの想いとその行動力は、山鹿市やその魅力を訪問者はもとより、多くの人に届ける活動へと繋がっている。

訪れる人の喜びに寄り添う、太田黒さんの想い
太田黒さんは、訪れるお客様に喜んでもらえる工夫を欠かさない。そのひとつがメニュー開発だ。お客様を飽きさせないように類似したメニューを避け、目新しいと感じてもらえるようなものを提供したいという。
ある時、来店したお客様から「こんなモンブランは見たことがない」と絶賛されたことがあったそうだ。その一声が太田黒さんにメニュー作りに対する自信を与え、モンブランをお店の看板商品にする後押しとなった。
また、モンブランは毎年バージョンアップをさせているという。お客様のイメージを損なわないよう、見た目は変えず、中身だけ少しずつ改良している。さらに、お客様から「持ち帰れる商品があれば・・・」との声を受け、持ち帰り用のスイーツも開発した。こうしたお客様の喜びに寄り添い、それを原点とした様々な工夫が、訪問する人々の笑顔を作り出し、記憶に残る素敵な場所となっている。
産地の味を最大限に生かした工夫満載のモンブラン
ベルアンドロワがくまもと山鹿和栗スイーツフェアに参加するのは今年で4回目。2022年のオープン時から毎年参加しているという。
そこで提供されている商品の一つに、「贅沢モンブラン」がある。あえて王道のモンブランを選ばれたわけだが、完成までに沢山の工夫と時間がかけられた特別なモンブランだ。
その時期で状態の良い栗を取り寄せることから始まり、品種ごとに大きさや硬さが異なるため、それぞれに合う調理方法の研究を行った。また、素材の味を損なわないように砂糖を入れすぎない調理方法にも心掛けている。さらに、栗は鬼皮の状態(外側のイガを取った状態)で受けとり、そこからの皮を剝いたり、湯通しする作業は全て手作業で行うという丁寧なひと手間が、見た目だけではなく、美味しさの特別感にもつながっている。

自分だけの特別感のある”素敵な場所”


モンブランの他にも、ベルアンドロワには暑い夏の今にこそ食べたいメニューもある。私たちも実際にその美味しさを味わった。
まず運ばれてきたのは、大きないちごのかき氷。削ったいちごのシャリっとした食感は新鮮で、食べ進めていくとなんとアイスが隠されていた。ボリューム満点ながらも、さっぱりしていて食べやすく、最後まで味の変化を楽しめた。
次に運ばれてきたのは、色鮮やかなマンゴーがたっぷりのせられたパフェ。ジューシーなマンゴーが贅沢に使用されており、その甘味とアイスの相性は抜群。このマンゴーのパフェは季節を問わず、年中味わうことができる。
店内の窓から見える自然豊かな風景とともに、太田黒さんが真心を尽くした料理を味わう贅沢な時間はこの場所でしか感じることのできない特別感のあるものである。太田黒さんが目指す “素敵な場所”が実現されており、誰もが訪れたらもう一度この空間に触れてみたいと感じるだろう。
ぜひ、みなさんも「ベルアンドロワ」という “素敵な場所”で心豊かな時間を過ごしてみませんか。

(写真)熊本県立大学 行政学研究室 、ベルアンドロワ提供
(記事)熊本県立大学 総合管理学部 田上真帆・仲光千聡