斜面をものともせず、栗農家が大事に育てた1年間の結晶が、 秋になると山々にたわわに実ります。

熊本県の栗の生産量は2,197トンで、茨城県に次ぐ全国2位の生産量です。熊本県で一番の生産量846トンの山鹿市は、西日本一の生産量を誇っています。

主に鹿北町と菊鹿町で生産されている山鹿の栗。
山沿いの傾斜が厳しい場所に栽培してあるので、油断していると転げ落ちそうなほどです。

5・6月頃に斜面全体を白く染め上げるように小さな花が咲き誇り、秋になると丸々とした大玉の栗が顔を出します。
この大玉の栗は、農家のたゆまぬ努力の結晶なのです。

生産者を訪ねて

おいしい栗を届けてくれる生産者の姿をお伝えします。

JA鹿本のクリ部会会長でもある古川信義さん(鹿北町在住)は、農家6人とともに6ヘクタールの栗園を管理しています。

この栗園には約5,000本の栗が植えてあり、西岳(標高648メートル)の麓に美しい栗園が広がっています。

ここで多く栽培されているのは栗の女王といわれる「銀寄(ぎんよせ)」という品種です。

一般に早生、中生、晩生の品種を交互に植えられています。

受粉後にうまく受精しなかった実は自然落果していくそうです。

栗に肥料を散布したり、草刈りしたり、剪定したり、一年を通してさまざまな作業が行われます。

暑い中、急な斜面を草刈り機で切っていく様子は、とても大変そうです。

しかし、額の汗を拭きながら力強く言います。

「手間暇かけた分、栗はおいしくなる」。

そうして、山鹿の栗は、皆さんに届くのです。

8月下旬〜10月にかけて、収穫作業は大忙し。

朝と夕方にも行います。

「皆さんに届く前にイノシシに食べられんごつせんとね」と、イノシシなど獣害との闘いも深刻な問題なのです。

また、大粒の栗を育てるために欠かせないのが冬の剪定作業(切って、片付ける)です。

栗の枝を剪定しないと、どんどん小さな栗になってしまいます。

若手の栗剪定チームが結成され、剪定作業を担うなど、おいしい栗を届けるための努力が続きます。

ますます山鹿の栗は大きく、そしておいしくなります。

栗の知っとく情報

栗の基本情報や日本での歴史に触れてみましょう。

栗プロフィール

原産地 中国、北アメリカ、地中海地方沿岸
分類 ブナ科の栗属の果樹
世界の栗 二ホングリ、ヨーロッパグリ、チュウゴクグリ、アメリカグリ

日本の「栗」の歴史

約1,200年前(奈良時代)の万葉集には「久利」。その後、約1,000年前の平安時代から「栗」と記されるようになったそうです。この栗は、食糧や菓子のほか、祭の供え物や税として現物納入もされていました。

栗の木は耐久性に優れているため、当時は貴重品で、お宮、お寺、高位の武家邸宅に使用されたと言われています。

栗は栄養満点

栗は焼いても蒸してもおいしいものです。

食品成分表ではナッツ類やゴマ類と同じ食品群に分類されますが、脂質が少なく、ご飯の栄養価に近いです。ご飯70gと栗70g(5個)で比べると、栗には、血圧低下作用があるカリウム、ハリのあるお肌を保てる銅、免疫系維持に不可欠なビタミンB6、血をつくる葉酸といったビタミン類がご飯より多く含まれています。

山鹿の「栗」の歴史

栽培の始まり

細川藩の熊本領物産帳(1735年)には、丹波栗、中栗、ササ栗が記されており、熊本県では古くから栽培されていたことが分かります。鹿北町でも明治以前より栗は木材として栽培され、栗の実は、その楽しみとして、岳間栗、岩野栗という名前で農家の庭先で売られていました。

日清戦争(明治28年)の時は、食糧を兼ねて搗栗(かちぐり)を「勝栗」として戦地に送られたそうです。

昭和初期から20年代

農村更生運動が沸き起こり農村を豊かにする産物として、昭和初期ごろから栗栽培が山間部に広がりました。菊鹿町では、昭和3年ごろに有志一家が3haの栗園を換金作物として栽培を始めました。

昭和26年~27年に全国的にクリタマバチが発生して、丹波系や大正早生がほとんど枯死ということもありました。

栗の再生と振興

昭和36年には農業基本法や果樹振興法が制定され、再び栗植栽が盛んになりました。

菊鹿町では昭和30年後半から40年初期にかけて約50haの集団栗園が完成しました。

鹿北町でも昭和50年から始まったみかん園の転換事業で栗への改植が多く、現在の面積となりました。昭和54年には菊鹿町では、県下に先駆けて「低樹高整枝技術」を導入。同年、鹿北町では「低温貯蔵庫」を導入。

一貫してブランド栗づくりに取り組みました。

令和6年に県や市、JA鹿本、生産者、商工・観光関係など11団体でやまが和栗振興協議会を設立し、「やまが和栗」のブランド化、生産基盤強化などに取り組んでいます。

こぼれ情報

昭和29年から鹿北町の栗は、下関、北九州、福岡中心に「木箱詰」で出荷されました。昭和40年には農協が、大阪に栗を初出荷しました。「熊本に栗産地あり」と市場のイメージを強め、東京にも出荷されたのでした。

菊鹿町でも、昭和40年に34トンだったのが、昭和53年には740トンの栗が出荷されるようになり、3・3・4運動(早生30%、中生30%、晩生40%)が行われていました。

栗の種類

栗には、どんな品種があるか知っていますか?

ぽろたん

渋皮がぽろっとむける画期的な栗で、料理がしやすいのが特徴。果肉の色も美しい。

丹沢

8月盆過ぎから収穫開始。早生の中では大玉で品質も高く、三角形の形が特徴。

筑波

栗定番の品種。大きめで、皮に光沢があり、ゆで栗や渋皮煮に最適。

銀寄

江戸時代中期に作られた非常に息の長い品種。
甘味、香気とも高いのが特徴。

利平

二ホンクリとチュウゴククリの雑種。低収量ですが、高品質で、人気がある栗。

山鹿の物産館

栗を買うなら、物産館がおすすめ。採れたての栗が並びます。

湯の街交流館 ふるさと市場
所在地
山鹿市山鹿1番地 温泉プラザ山鹿1F
湯の街交流館 ふるさと市場
所在地
山鹿市山鹿1番地 温泉プラザ山鹿1F
あんずの丘
所在地
山鹿市菊鹿町下内田733
JAかもとファーマーズマーケット「夢大地館」
所在地
山鹿市鹿央町千田2950-1
鹿央物産館
所在地
山鹿市鹿央町岩原2965
道の駅水辺プラザかもと
所在地
山鹿市鹿本町梶屋1257
道の駅鹿北 小栗郷
所在地
山鹿市鹿北町岩野4186-130

栗関連イベント情報